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世界のプラスチックを ポリ乳酸に

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PROJECT 01

  • INTRODUCTION

    ポリ乳酸(PLA)などの生分解性プラスチックの開発はハイケムにとって重点プロジェクトの一つだ。環境に優しいプラスチックは地球に優しい一方で、コストや物性の課題を抱えている。ハイケムでは営業と研究が一体となり、これらのプラスチックを一般に広く普及させるというミッションを掲げている。

    2020年には、ポリ乳酸(PLA)などの生分解性プラスチックの市場開拓をスタート。2022年9月には素材研究支所を新たに立ち上げ、生分解性プラスチックの性能向上および応用開発が社内で実装できる体制を構築した。

    このインタビューでは、研究者、営業の開発担当者に実務や仕事に懸ける思いについてのお話を伺った。未来を担う次世代の樹脂開発プロジェクトに興味を持つ皆さんには、ぜひご一読いただきたい内容だ。

MEMBER

  • 研究

    ハイケム東京研究所 素材研究支所

    所長 Tさん

    中国湖南大学にて有機化工を専攻。卒業後、中国国営の化学企業にてPVC合成や重合に関わる業務に従事。その後、名古屋大学に留学し、応用化学の修士課程を修了。日本の大手プラスチックコンパウンドメーカーに26年間勤務後現職。
  • 素材研究支所

    Kさん

    山形大学で高分子材料の研究に従事し、修士課程まで修了。卒業後、プラスチックフィルムメーカーにて勤務。フィルムの成膜技術や表面処理技術の開発に6年間携わる。生分解性樹脂などの新素材の研究に興味を持ち、2022年6月にハイケムに転職。素材研究支所の立ち上げメンバーとして活躍中。
  • 素材研究支所

    Xさん

    医者を志し、中国の大学に入学。二年生の時に応用化学に進路変更する。卒業後、京都大学に留学し、有機金属の研究に従事し、応用化学の修士課程を修了。卒業後は上海の日系企業にて樹脂材料の研究に4年間従事。もう一度来日したいという想いと、もっと環境に優しい樹脂の研究にとりくみたいという希望を叶え、ハイケムに2022年8月に入社。素材研究支所の立ち上げメンバーとして活躍中。
  • 営業

    サステナベーション本部 
    ファッション・アパレル部

    プロダクトマネージャー Fさん

    関西学院大学にて経営を専攻。卒業後は、大手自動車部品会社に就職し、中南米地域を担当する海外営業に従事。その後、家業のアパレル向けのテキスタイルなどを扱う繊維専門商社でアパレル向けに生地、製品を販売する。数々の大手アパレル企業にて商品企画、生産を統括した後、2021年1月にハイケムに入社。HIGHLACT®のアパレル分野での開発営業を主導。
  • 貿易本部 機能性ポリマー部

    Rさん

    琉球大学にて機械工学を専攻し、修士課程まで修了。卒業後、新卒でハイケムに入社し、主にポリプロピレン樹脂を中心に各種樹脂の技術ライセンス事業に従事。2021年1月より生分解性樹脂をはじめとした環境対応材料の市場開拓を担当。

INTERVIEW
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01

ポリ乳酸の課題は、
コストと樹脂の高機能化

― ハイケムではポリ乳酸(PLA)などの生分解性プラスチックの市場開拓を2020年から進めていますが、営業サイドからみた進捗状況を教えてください。

R ポリ乳酸(PLA)の市場開拓についてはまだ途中段階ですが、環境対応を進める各業界からの問い合わせが増え、少しずつですが採用実績も積み上がってきています。日本ではプラスチックごみの回収が進んでおり、生分解性プラスチックの採用状況は中国などの諸外国に比べると緩やかですが、バイオマス由来の材料に対する関心は高まっており、市場開拓の潜在力があると感じています。

F 繊維業界では、ハイケムの生分解性プラスチック事業は、知名度が上がり、業界内での評価も高まっています。2023年の春夏シーズンでは、14ブランドからポリ乳酸(PLA)の自社ブランド「ハイラクト®」を採用いただき、店頭などでの商品展開を行っています。このような評価と広がりは、ハイケムの取り組みの成果と言えるでしょう。業界内での認知度の向上と共に、市場開拓の成功に期待が寄せられています。

― ポリ乳酸(PLA)の市場開拓においてハイケムに寄せられる期待は?

R ポリ乳酸(PLA)を営業していて、市場からハイケムに寄せられる期待はコスト低減と樹脂の高機能化です。

まずコストについては、現在のポリ乳酸(PLA)の生産量は世界で約3~40万トン程度ですが、汎用プラスチックの生産量は数千万トンに上ります。将来的にはハイケムの協力先メーカーにおいて、100万トン級のポリ乳酸(PLA)樹脂を生産する計画も進んでおり、コスト低減に対する期待が高まっています。

また、ポリ乳酸(PLA)は環境に優しい素材ですが、耐熱性など、成形時の問題点があります。耐熱性の向上や新たな用途開発には改質や添加剤の研究開発が欠かせません。ハイケムが行う研究開発に対して市場から寄せられる期待は大きいです。

02 ポリ乳酸の研究開発体制をゼロから構築

― 2022年に素材研究支所が新設されました。研究内容を教えてください。

T 素材研究支所では、生分解性プラスチックの性能向上や応用開発に取り組んでいます。また、海洋生分解性を有する樹脂の用途開発や、生分解性樹脂のコンパウンドにも取り組んでいます。

X ポリ乳酸(PLA)の研究開発は持続可能な素材開発の観点から非常に興味深い研究です。プロセス自体が環境に優しく、バイオプラスチックの需要が高まっている現在において、その可能性は非常に大きいと感じています。

― 研究室の皆さんにお伺いします。ハイケムで研究する上でのやりがいは?

K 研究室では、転職してこられた方が多く、それぞれが異なる仕事をしているため、困ったことがあっても多様な視点や意見をもらえるので面白いですね。また、社外との協力プロジェクトも多く、様々な情報が入ってくるため、広い視点で物事をとらえることができます。
また、ハイケムの研究所では中国人の研究者が多いことも面白い点ですね。日々、皆で率直に意見を出し合うのですが、常に前向きでさっぱりした雰囲気があると思います。

X ハイケムでは、生分解性プラスチックの研究は新しい取り組みですので、一定の分野においては、私が最も専門家となる場合が多々あります。前職ではずっと学ぶ立場でしたが、今は教える立場にいます。人に教えることは得意ではありませんでしたが、この経験は自分にとってプラスになっていると思います。特に自分で開発した測定方法をチームで共有することは、新たな課題の解決や問題解決に貢献するうれしさを感じながら、同僚に教えることで業務の均一化につなげることができます。

T 生分解性プラスチックの研究はまさに、ハイケムにとって新規ビジネスなので、研究のための機械も設備もない、まったくのゼロからのスタートでした。新しい研究所に、装置を設置してそれが実際に動き、試作に成功した時は本当に嬉しかったですね。ハイケムに入って、一番の経験だったと思います。

K そうですね。新しいプロジェクトを始めるために、素材研究支所を作って、そこに機械を入れるところを目の当たりにし、 さらにその設備も整って、これから装置を動かすぞっていうタイミングは、やっぱりすごく感動しましたね。本当に今からプロジェクトが始まるんだなっていう瞬間に立ち会うことができました。

02

ポリ乳酸に付加価値を加える

― 営業にとって、自社に研究施設があることの強みは何だと思いますか?

R 社内には幅広い専門知識を持つ人材がそろっていて研究施設も整っていることは商社としては珍しいです。これらの知見を活かして開発を進め、ポリ乳酸(PLA)に付加価値を加えることで次世代の製品開発に取り組んでいます。これらの取り組みは顧客への提案時において他社との差別化につながっていると考えています。

F そうですね。また、我々のような営業担当もが社内にいることで、自ら用途開発を行い顧客に紹介したり、サプライチェーンの中でパートナーを見つけて世の中に発表するなど、独自の手法で新規ビジネスを展開することができているのも面白い点です。

04

アイデアさえあれば新しいものを創り出せる
まるでレゴブロックのような研究

― 今後のポリ乳酸(PLA)の市場開拓と研究開発の方向性を教えてください。

F 我々としては、石油由来の合成繊維をポリ乳酸(PLA)繊維に置き換えていきたい。そのためにも今後はヨーロッパのメゾンブランドにアプローチしていきたいと考えています。ヨーロッパは環境対応に対してすごく敏感な地域として知られていますが、ポリ乳酸(PLA)は、まだ認知度が低く彼らにとって未知の繊維です。ですから、Made in Japanの素材として受け入れられる素地は大きいと思います。

また、ヨーロッパのブランドに展開することで、日本や中国のマーケットにおいて、さらに多くのブランドに採用していただき、素材としての認知度を広げていきたいです。

R ポリ乳酸(PLA)は今一番、世の中で使われている生分解性プラスチックですので、積極的に取り組んでいます。しかし、他の環境対応樹脂にも注力していきたいと考えています。海洋生分解性を有する樹脂やバイオ由来のプラスチックなどについても、研究施設を自社で持つことで広がる選択肢が出てくるのではないかと思います。

T 化学、特に、高分子ポリマーというのは、組み合わせ次第で様々な化合物を作り出すことができ、まさに子供の頃に遊んだレゴのようなものです。
是非、そういう意欲のある研究者の方々には、ハイケムのチームに加わっていただきたいです。

高分子量PLA